縦走登山1日目 白谷雲水 峡~縄文杉 [九州編その2]
2010年5月26日 水曜日 200日目
ちりも積もれば200日。本日めでたく旅出発から200日目になり申した。初上陸の屋久島で迎えたことは、記憶に残る区切りであろう。
5時に目が覚める。変なおっさんが車で通りすぎながら、「起きろー、起きろー」、とか叫んでいたように思う。不審者かな?おかしな人もおるもんである。
8時半から宮之浦港の観光案内所がオープンするので、それに合わせて公園の反対側の港まで走る。
案内所のおばちゃん、セツ子さんは、自転車に揚げている人生相談ののぼりを見てヨッシーの旅に興味を持ってくれた。そして親切に縄文杉や宮之浦岳への行き方とバスの乗り継ぎなどを教えてくれた。
始めはシゲに勧められた、淀川登山口から入り、宮之浦岳、縄文杉を廻って白谷雲水峡へ抜ける縦走ルートを考えていたが、バスの時間や接続を考えると、やっぱりその逆の方が便利であることがわかった。
天気はこれから数日は晴れの予報であるし、もうこのままここから出発するのがタイミングとしてもよいと直感が働く。
自転車は港の駐車場に置いておくとよい、とセツ子さんが教えてくれた。
しかし白谷雲水峡(しらたにうんすいきょう)、略して白水峡(はくすいきょう)までのバスは10時出発である。あと1時間しかない。食料の買い出しに行って、自転車から必要な装備を取り出してパッキングするならもうぎりぎりの時間である。
近くにあるヤクデンというスーパーに走り、食料とビールを買い出し、港に舞い戻るともう9時半になっとる~。時間無い~!もしバスに間に合わんかったら、諦めて明日のバスにしようと腹をくくる。
縦走登山なんて何年振りであるか。今回は3日をかけるつもりだが、自転車旅中心の装備しか持っていないので山登りできるか不安もある。
まず靴。普通のスニーカーしかない。
それからザックも小さいデイパックしかない。
どちらもレンタルするお店が近辺にいくつかあるので借りることもできるが、もちろんお金がかかる。それぞれ1500円くらいづつ必要になりそうなので、それはパス。
まあ昔は有るものでなんとかしていたわけだし、今ほど高性能で軽量な装備も無い中で、工夫しながらやってきた日本登山の歴史を考えれば、
「案ずるより産むがヤスシキヨシ!」
の精神で行くことにする。
靴はスニーカーで良し。足首まで保護されていないから、怪我しないように疲れないように、一歩一歩足を置くところを慎重に選んで歩くことを心掛ける。途中壊れた時などのバックアップに、サンダルを持って行く。ネパールで山を登ったとき、ポーターに雇った現地ネパール人たちは、4000mまで裸足で登っていたしなあ。靴とか持ってないのかなあ?と思っていたら、荷揚げが終わって解放されると、フトコロからペラペラのサンダルを出して履いていた。
よそ行きのサンダルが壊れたり減ったりしないように、仕事は裸足でするのだ。オモロー。
自転車に付いているサイドバッグをひとつ外し、デイパックの後ろにくくりつける。これで容量アップ!さらにヨッシー専用エコ無電源冷蔵庫をその上にゴムバンドでくくりつけた。うーん、修験道の行者のようでもある。
ネパール人も、一人が二人分の荷物を担いでいた。2つのザックをロープで縛り合わせ、それを背負って運んでいたのだ。だからヨッシーもこれでいいのだ。
10時のバスは、崖っぷちを舐めるような急坂を上がり、11時少し前に終点の白水峡入口に着いた。ちなみに白水峡と略すと、西宮の山中にある、我が家の墓所があるところの名前と一緒になってしまうがそれはご愛敬である。
谷間を縫って沢が流れ、山の冷気が下界とは異世界であることを教えている。
バスの出発ぎりぎりに飛び乗ったので、パッキングする間が無く、それぞれバラバラのままとにかくバスの座席に放り込んでおいた。さて、頭の中ではさっき書いたみたいにパッキングするするつもりだが、もしうまく行かなかったら今日は日帰りで白水峡だけ歩いて帰ることにしよう。
そういう心配も取り越し苦労に終わり、なんと見事にパッキングができてしまった。もう歩くしかない。
入口で協力金300円をおばちゃんに払う。
「縦走ですか?」、とおばちゃんが聞く。素人丸出しの装備類と、無理矢理ゴムバンドでくくったパッキング姿におばちゃんも他人ながら心配になった模様である。
「登山届けは出しましたか?」。
「うん。港の観光案内所に出した」。
「下山したら警察に届けを出してくださいね」。
「はあい」。
さて白水峡は、映画もののけ姫のモチーフになった森などがある場所としても有名である。
気軽に日帰りで来れる場所でもあるので、軽装で散策する人も多い。ヨッシーは今回2つあるコースの内、原生林コースを選ぶ。
沢沿いに歩きはじめると、なるほど先日たるみずで訪れた猿ヶ城渓谷に似ている。岩のあいだをすり抜けるように流れが渡っている。しかし水は猿の方が透明度は高そうに見える。
こちらのコースは歩く人があまりいないのか、誰とも会わないなあ~、と思っていたら、前から美女が一人で歩いてきた。立ち止まってお話する。佐世保からバイクの一人旅できた藍ちゃん。長澤まさみ似である。お話ししながら、この娘とはまたどこかで会うような気がするなあ、と思った。
「じゃあまたどこかで会おうね」。
と言い合ってお別れする。
途中にもびびんこ杉、
とか、奉行杉、
とかがあり、それぞれそれなりに太く大きい。縄文杉はもっとでかいのであろうか。
白谷小屋で休憩。11時に歩き始めて、ここまで1時間半かかった。概ねコースタイム通りだろうか。今回ヨッシーは、案内所でもらった無料のコース案内図を持って登っている。地図は無し。このへんも素人登山と思われてもしかたないところである。
弁当食ってまた歩く。人が多いなあ。聞けば平日も土日も関係なく人が多いらしい。
分岐点の辻峠から、見晴らしの効く太鼓岩まで往復する。また同じところまで戻るので、ザックは峠に残置して空荷で歩く。10分ほどで太鼓岩到着。ここも狭い岩の上に何人も上がって、やや混雑しておる。
はるか下に流れる安房川(あんぼうがわ)も見える。
さて辻峠まで戻って荷を背負い、楠川分かれを目指す。日帰りの人はだいたい太鼓岩までで引き返すので、ここからは人が少なくなった。
楠川分かれからトロッコ道に出る。ははあ。これがトロッコ道か。話しには聞いていた。
さて、ここからトロッコ道を3.7キロ歩く。ほぼ平坦なので歩き易いが、景色があまりかわらんので飽きてくる。
中間点くらいのところにあった腰掛けで休んでいると、おっきな荷物を背負った関西訛りのお兄ちゃんがやってきた。いっしょに座って色々話すと、彼の歩くルートも泊まる山小屋もほぼ同じであることがわかった。
そんじゃあこれからもヨロシク、と名乗り合う。奈良から来た西岡くん。ニッシーと呼ぶことにする。
彼もバイクで日本一周中である。ヨッシーと同じニオイがしたのかな?
今日の目的地は縄文杉のそばの高塚小屋である。では、あとでね、とニッシーに声をかけて先に行く。
大株歩道入口でトロッコ道が終わる。ここで午後4時になった。ここから縄文杉まで、標準コースタイムだと2時間15分。そのとおりだと6時15分には着くからまだ明るい。
登山道は整備されていて歩きやすい。木の階段があったりする。
翁杉。4時20分。
ウィルソン株。4時半。
ここは有名だからよく知ってるが、来るのは初めてである。ウィルソン、と聞いて、いつもチャック・ウィルソンを思い出すのは私だけ?
予想より大きかった。
大王杉。5時20分。看板はあったがどこにあるんか?とぐるぐる見回したら、ちょっと離れたところにあった!
でかすぎてカメラに入らん!いままでで一番迫力あった。
夫婦杉。5時30分。引っ付いてるみたいになっとるから夫婦杉か。
そしてキター!ついにキター!
縄文杉。6時。
でかいし太いし、これが杉か?てな感じの育ちかたやないかい?
さて、さっそく重いところを運んできたビールで乾杯。
うまーい!キンキンに冷えとるし最高じゃっ。
30分ほど観賞して、ここから10分の高塚小屋に入る。案外人が多い。先着の人にお願いして、なんとか一人分隙間を空けてもらう。
「ぼくスリムなんで少しだけ空けてもらえたら大丈夫です」、とか冗談言っても、皆さん寝るスペースが狭くなるのが気になるようで、誰も笑ってくれない。
なんとか一人分確保したら、さっそく小屋の外で自炊する。ヨッシーにとっては、別に普段と変わらない行動である。ご飯を炊いてハンバーグ&生卵で夕食とする。
芋焼酎で一人乾杯をしていると、ニッシーがやっと到着した。ずいぶん遅いし、途中で休憩しているときにも追いついて来なかったので、途中であきらめて帰ったか、あるいはヨッシーが見たのはニッシーの幻だったか?と思い始めていたのである。
けっこうよれよれ状態で到着した。彼もテントは無く、小屋泊りのつもりだったので、さらにスペースを確保できるよう一緒にお願いに行ったら、上の段の5人組がテントを張って泊まるからここ空けますよ、と言ってくれた。
それに上じて、ヨッシーも2段目に移動して広い場所を確保した。
飯も終わり、日が暮れたらもう寝るだけである。まだ8時だが、山小屋の生活はこんなもんである。
明日は5時起きで、朝焼けに染まる縄文杉を見に行く予定。天気が良ければ、の話しだが。
走行 5キロ 出費 1488円 (バス、協力金、弁当、発泡酒)